2009年8月19日水曜日

抗うつ薬「SSRI」や「SNRI」で攻撃性?

治験薬と有害事象との因果関係の判定において、医師が苦慮している場面を時々見かけますが、下の記事にもあるように抗うつ薬と「アクティベーション症候群」との因果関係も難しいようです。

■うつ病患者の大半が服用する抗うつ剤「SSRI」や「SNRI」を巡り、厚生労働省が6月、「他人への攻撃性が増す可能性がある」として注意喚起した。だが、焦燥感やいらだちなどは副作用か病気の症状か判別が付きにくい。抗うつ薬は効果が出るまで時間がかかり、患者は不安を感じがちだが、うつ病は薬の適切な服用で回復が早まるケースが多い。医療従事者に相談するなどして患者本人が納得して治療を受けることが重要だ。

 厚労省が新たに副作用として注意喚起したのは、「アクティベーション症候群」と呼ばれ、不安やいらだちが強くなったり、ささいなことで怒りっぽくなったりといった症状。抗うつ剤の飲み始めや増量時に出てくるという。

 1年半前までSSRIの一つ「パキシル」を飲んでいた千葉県の中西一久さん(34)は、病院の掲示板で注意喚起について知った。「驚いて、起こり得る症状は何か全部読んだ」が、当てはまる症状はなく、「自分は大丈夫」と少しほっとした。

 現在SNRIの「トレドミン」を主に服用している会社員、須藤仁志さん(46)は、「飲んでいる患者は何十万人といるのに、実際に薬との因果関係があるとされたのは数件だけ」と冷静に受け止めた。ただ、「この薬で助かっている人が多いのに、患者への影響が心配」と懸念する。

 SSRIの国内販売開始は1999年。現在4商品あり、うつ病治療では最初に処方される。旧来の「三環系抗うつ薬」と比べて便秘、太りやすい、心臓への負担などの副作用が少なく安全性が高いとして、「発売当初は過剰な期待があった」と日本うつ病学会理事長で防衛医科大学校の野村総一郎教授は振り返る。

 ただ、アクティベーション症候群が起こり得るのは「当初からわかっていた」と野村教授。抗うつ薬は落ち込んだ気分を引き上げようとする作用を持つ。うつ病の人に多いストレス状態は変わらないのに、活力だけが出てイライラするわけだ。「SSRIやSNRIに限った副作用ではない」(五十嵐良雄・メディカルケア虎ノ門院長)という。

 同症候群が注目されなかったのは、うつ病に伴う症状と区別が付きにくいことが大きい。須藤さんの場合、「抗うつ剤服用とは関係なく、職場で電話中に怒鳴ったり、机をたたいて同僚に怒鳴ったりすることがあった」という。野村教授は「症状と副作用との見分けは医師にも難しく、慎重な判断が必要」と話す。

 ただSSRIやSNRIが誰にでも効くわけではない。

 都内在住の伊藤博さん(仮名、37)は昨春、座っていられないほどの疲労感や不眠、食欲不振に陥った。多忙な部署に異動。午前8時に出勤、帰宅は午前3時という日が続いた。翌月に精神科のクリニックを訪れると「典型的なうつ病」と診断された。

 処方されたのはSSRI。副作用はないが、薬の量を増やしても症状は改善せず、7月中旬から徐々に三環系抗うつ薬に代えていった。便秘や排尿困難などの副作用はあったが、9月には外出できるようになるなど劇的に回復。「良くなる実感がなくて不安になったが、『10%回復したくらい』『よくなるのは半年くらいから』などの主治医の言葉を支えに薬を飲み続けられた」と伊藤さん。

 他方、SSRIの中でも効果が同じとは限らない。都内に住む元教員女性(44)は、日本で売られるSSRIを一通り経て、「ジェイゾロフト」でようやく効き目を実感。「別の薬に切り替えるのに3カ月ぐらいかかる。1年はあっという間で、本当に治るのか不安だった」と振り返る。

 一般に抗うつ剤は効果が出るまで2週間程度かかる。効果の実感前に吐き気などの副作用が出ることも多く、飲みながら不安を感じる患者は多い。不安の解消には、医療従事者との対話が不可欠だ。

 「患者と話し合いながら薬の量や種類を変える」と伊藤さんの主治医、元日本うつ病学会理事長で国際医療福祉大学の上島国利教授は説明する。2回目以降の診療は短時間になりがちだが、上島教授が1人にかける時間は30~45分。「雑談しながら状態を把握する。例えば、新聞を読めるようになれば回復してきたということ」

 上島教授が重視しているのが、単に医師の指示に従うのでなく、自身が納得して薬を服用するという患者の態度である「アドヒアランス」。本人が薬で治していくという意志を持ち、医師と話し合い計画通りに薬を服用する。

 アドヒアランスには患者が病気や薬と向き合うことが必要だ。「鬱姫なっちゃんの闘鬱記」を書いた杉山奈津子さん(27)は、大学入学後初めて受診した精神科では、処方された抗うつ剤が「副作用が強くて飲めず、毎週のように変えてもらった」という。薬学部に進んだ3年生で、抗うつ剤がどのように効いていくのかを知った。「薬の知識を持ってからは受け入れられるようになった」という。

 また、須藤さんは以前かかった診療所の復職プログラムで受け取ったチェックシートを活用している。うつ病に伴う様々な症状が項目にあり、「定期的なチェックで自分の状態が把握しやすく、薬の合う・合わないも含めて主治医に相談しやすい」という。

 うつ病には、比較的抗うつ剤が効きにくいタイプもある。一つは若い人に多いとされる「非定形うつ病」などと呼ばれるものだ。中高年に多いうつ病に比べ、他人への責任転嫁や、仕事を離れると活力が戻るなどの傾向があるという。

 うつ病患者の復職プログラムを持つ「メディカルケア虎ノ門」(東京・港)の五十嵐良雄院長は、「従来の中高年に多いうつ病に比べて不安が強い」と見る。SSRIやSNRIは三環系など従来の抗うつ剤と比べて不安を取り除く作用があり、きちんと服薬すれば一定の効果はあるが、「服薬に懐疑的な患者が多い」と同院長は指摘する。

 薬物療法以外に注目されるのが「認知行動療法」など心理学的アプローチで働きかける治療だ。薬が効きにくい患者に、薬と併用すると効果的という。名古屋市立大学の古川壽亮教授は認知行動療法について「考え方や行動を変えることで、気持ちを変えていこうとするもの」と説明する。

 例えば、うつ病患者は知人が自分の前を通り過ぎると「自分は無視された」などと思い込みがちだ。これを、「知人は忙しかったからだ」「近眼で見えなかったからだ」などとより現実的な考え方に変えることで、気持ちが落ち込むのを防ぐクセをつける。

 ただ、国内では認知行動療法の統一ルールやマニュアルがなく、療法普及へのハードルになっている。「各医療機関がバラバラの方法で実施しているのが問題」と古川教授は指摘する。また、医療保険の適用施設も既存の「精神科デイケア」などを当てはめており、「診療報酬上の評価がほとんど無いのが実情」(五十嵐院長)という。

 ▼SSRIとSNRI SSRIはうつ状態の脳内で減少している神経伝達物質セロトニンの働きを強め、抗うつ作用を示す。三環系抗うつ薬と薬が効く仕組みや効果はほぼ同じだが、従来と比べ純粋にセロトニンだけの濃度を上げるため、副作用が少ない。

 SNRIはセロトニンとノルアドレナリンの濃度を高める。ノルアドレナリンを増やすことで意欲や活動性を高める効果が期待されている。

 国内で販売されるSSRIは「パキシル」「デプロメール」「ルボックス」「ジェイゾロフト」で、最も多いパキシルの年間投与者は123万人(推計)。SNRIは「トレドミン」などの商品名で年間約38万人(同)に投与されている。

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