新薬の開発について、宇宙での研究を進める「宇宙創薬」というものがあるようです。
この新しい手法に期待が持てそうですね。
■精神障害に有効な新薬の開発に役立てようと、三菱重工神戸造船所(神戸市兵庫区)は、マウスを宇宙へ打ち上げて地上へ帰還させ、中枢神経への影響を調べる壮大な実験を計画し、人工衛星に積み込む生命維持装置を完成させた。28日に医薬基盤研究所(大阪府茨木市)で一般公開する。平成24(2012)年の実施が目標で、実現すれば世界最小の生物回収衛星となる。マウスを使った「宇宙創薬」ビジネスに発展させることが狙いだが、同社は「最終的には国産有人往還機の実現につなげたい」としている。
■世界最小
同社が開発する「回収カプセル型生物実験システム」は、大阪府東大阪市の中小企業が作った人工衛星「まいど1号」と同様に国産ロケット「H2A」打ち上げ時に空きスペースに相乗りさせる小型衛星。直径約65センチ、高さ約50センチ、重さ約110キロで、衛星打ち上げ後、地球を1周させ約2時間無重力状態に置く。その後、大気圏に再突入、パラシュートで南米沖の太平洋に着水させて回収する計画だ。
衛星内部にはマウス3匹の搭載が可能。三菱重工は、密閉した飼育かごの中を1気圧、気温24度に保ち、酸素や水を供給し、二酸化炭素や排出物を回収する生命維持装置を先行開発した。打ち上げ1日前に衛星をロケットに積み込むことを想定し、34時間にわたってマウスを密閉空間で生存させられることを確認した。
マウスは無重力下では短時間でも中枢神経系に異常が出始めることが知られており、異常の出たマウスを解析することでパニック障害や鬱病(うつびょう)などの新薬開発につながると期待されている。製薬会社側も、大手8社が加盟する「宇宙創薬協議会」を昨年立ち上げて期待を寄せており、三菱重工は「ビジネスとして成立しうる」とみている。
■国産有人機の一歩に
ただ、日本は大気圏に再突入する回収型衛星の実績に乏しい。関係者によると、再突入の技術は軍事転用の恐れもあるため他国から提供を受けるのは困難といい、自前での技術開発が必要となる。このため、衛星の開発には数十億円が必要となる見通しで、三菱重工は経済産業省などに事業化を提案、平成23年度の予算獲得を目指している。
同社有人システムチームの落合俊昌・主席チーム統括は「H2Aに相乗りさせることで、単独打ち上げよりはるかに安く、多くの打ち上げ機会を得られるメリットがある。量産できれば1機あたり10~20億円での打ち上げが可能だろう」。製薬会社からは「もっと長期間の実験ができれば」との要望も寄せられており、同社は約2週間の宇宙滞在が可能な重さ500~900キロ程度の衛星開発も検討している。
マウスが無事生還すれば、日の丸有人宇宙船の実現に向けた大きな一歩にもなりそう。落合さんは「何とか成功にこぎつけたい」と話している。
生命維持装置の一般公開は、28日午前10時~午後4時、入場無料。問い合わせは医薬基盤研究所(072・641・9832)。
(11月26日 産経新聞)
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