2009年11月25日水曜日

アルコール依存症―「飲む欲求」脳で消す、日本新薬、根治へ治験

 昨今の不況の深刻化でストレスが増加、酒やたばこの依存症になる人が増えているそうです。
 現在の断酒治療に使われる薬は、少量の飲酒で吐き気や頭痛を起こさせる「嫌酒薬」が一般的でした。
 これは、1950年代以降に発売された薬でアルコール成分が肝臓で代謝されるのを阻害し、「悪酔い」のような状態に追い込みます。ただ根治薬ではないうえ、薬の服用自体を途中でやめ、再発するケースは少なくありませんでした。この根が深いアルコール依存症に一石を投じる薬の臨床試験(治験)が進んでいるようです。

~以下、記事抜粋~

『酒は百薬の長』という人もいるが、一度アルコール依存症に陥れば、精神的、身体的な疾患を引き起こす。喫煙による肺がんなど呼吸器系の患者も増え続けている。製薬各社も重篤な精神障害と位置付け、治療薬の開発に本腰を入れ始めている。

 「大酒飲みの病気が治る新薬ができると聞きました。私の父親もぜひ治験(臨床試験)に参加させてもらえませんか」。アルコール依存症からの根治を狙った国内初の治療薬開発を進める日本新薬には、1日に数件こうした電話がかかってくる。

 アルコール依存症は一定時間以上酒を断つと、神経が高ぶり脳内が興奮状態に陥る疾病。手が震えたり、幻覚や意識障害を引き起すこともある。飲酒量増加とともに、肝臓や膵臓などの内臓疾患やうつ病などの精神疾患に陥り、死に至るケースもある。

 ただ一人で依存症を脱することは難しく、専門の医療機関に入院して断酒する必要がある。だが、「完全に断酒に成功する患者は1割程度」(都内の精神科医)にとどまっている。

 日本新薬の新薬候補「NS―11」は、医療機関で断酒トレーニングを終えた患者が自宅でも酒を断ち続けるために服用する経口剤だ。「脳内物質のグルタミン酸に働きかけ、酒を飲みたいという欲求そのものを抑える効果が期待される」(今野清隆・臨床開発統括部長)という。

 このほど治験の最終段階に入った。厚生労働省の製造販売承認が得られれば2013年にも発売する。

 海外でもアルコール依存の根本治療に向けて新薬の開発が進む。デンマークの製薬会社ルンドベックが開発中の「ナルメフェン」は中枢神経のオピオイド受容体に働きかける。快楽の感情をコントロールする脳内物質ドーパミンの量を調節し、「飲酒しても気持ち良くならない」状態を作りだす。これにより飲酒量を徐々に減らしていく効果が期待されている。現在欧州で第3相治験を実施しており、2011年にも当局へ承認申請する計画だ。

 米国では産官が連携。米国立衛生研究所は英製薬大手アストラゼネカの統合失調症治療薬「セロクエル」の持つ薬効に目を付けた。同薬は脳内の興奮状態を抑制する作用がある。アルコール依存症にも効果があると治験に取り組んでいる。

 米国のアルコール依存症の患者数は約1800万人。成人11人につきおよそ1人の計算になる。その一方で有望な新薬開発が進んでいないため、米国政府は約2500万ドル(約23億円)の予算を計上して官民の協力体制を強化している。

 日本の飲酒人口は6000万人程度でこのうちアルコール依存症の潜在的患者数は約230万人。だが、実際に医療機関に受診する人は10万人程度にとどまる。アルコール依存症に対する患者本人の認識不足もあるが、スムーズで効果的な新薬や治療法が確立していないためでもある。それだけに画期的な治療薬の開発が急がれている。 (2009/11/25 日経産業新聞)

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