2009年10月13日火曜日

サリドマイド、作用の仕組みは?

 しばらく販売が中止されていた「サリドマイド」ですが、未知の作用をもっている可能性があるそうです。

■妊婦が服用すると胎児に影響を及ぼし、1960年代に薬害を引き起こした睡眠導入剤「サリドマイド」は、評価の難しい薬だ。がんやエイズなどの難病の治療で有効性が見つかり、2000年ごろから世界で復活を果たしている。体内でどのように働いているのか詳しい仕組みが分からず、研究者泣かせといえる。

 旧西独の製薬会社、グルネンタールは、サリドマイドに睡眠作用を見つけ57年に発売した。60年代に入り、服用した妊婦から肢体の不自由な子供が生まれる問題が発生し、販売は中止に。日本でも大日本製薬(現・大日本住友製薬)が発売した「イソミン」が同じ経緯をたどっている。

 グルタミン酸をもとに合成されたサリドマイドには、構成元素が同じでも、右手と左手の関係のように立体構造が違う2種類がある。生体内での振る舞いが異なり、当初、右手型のサリドマイドに睡眠作用があり、薬害を引き起こす原因は左手型にあると唱えられた。しかしこれは現在、誤りだと考えられている。

 東京大学分子細胞生物学研究所の橋本祐一教授は「サリドマイドは体の中で、右手型と左手型が常に入れ替わっているようだ」と解説する。たとえ右手型だけを飲んでいても、薬害は発生していた可能性がある。

 そもそも左手型に原因があるとした動物実験は再現性がなく、販売中止とともに検証が遅れた。マウスの実験で毒性がなくてもニワトリやサルで異常が発生するなど、動物によって結果がまちまちな点も混乱の要因だ。

 サリドマイドが作用する仕組みの解明がなぜ難しいのか。これまでの研究から、サリドマイドそのものが働くのではなく、体内で分解された数々の成分が、複雑に絡み合って作用しているためだとみられている。

 免疫の活性化や抑制、新しい血管の形成阻害など多岐にわたる機能が見つかっているが、どの成分がどのように働いているのかは不明だ。胎児に影響を与える仕組みだけでも「30以上の仮説がある」と紹介する解説書がある。成分は小さな分子で変化も速い。最先端の技術を使っても、追跡作業は困難を極める。

 こうした研究から逆に、よい治療法のなかったがんや難病に伴う皮膚病の改善にサリドマイドの有効性が明らかになってきた。日本でも08年、多発性骨髄腫の治療薬として製造販売が認められた。医師や患者らを登録制にする監視体制を敷いて中堅薬品メーカーの藤本製薬(大阪府松原市)が販売している。(2009/10/11 日本経済新聞)




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