2009年5月20日水曜日

万能細胞、臨床応用指針作り着手

先日、どんなに万能細胞を用いた研究が進んでも国の指針が追いつかないと、医薬品にはならないというコメントを書きましたが、今日のニュースによると臨床応用に向けた国の指針が策定されるようです。



■ 厚生労働省は十九日、ヒト胚(はい)性幹細胞(ES細胞)や新型万能細胞(iPS細胞)に代表される万能細胞を用いた再生医療の臨床応用に向けた指針の策定に着手した。研究者などが万能細胞を使って難病患者を治療する際に必要な安全性の確認手続きや、治療対象となる病気の種類などを定める見通しだ。
 
 米国に比べ、日本では臨床応用の指針作りが遅れていたが、ようやく策定に向けて動き出す。
 
 同日、指針策定を議論するための専門委員会が都内のホテルで初会合を開いた。委員は再生医療や生命倫理の研究者、ジャーナリストなど十五人で構成。座長には東京大学の永井良三教授を選任した。一―二カ月に一回の頻度で会合を開き、少なくとも一―二年をかけて慎重に議論を進める見通し。
 
 一九九八年に米国で初めて作製されたヒトES細胞は、日本では二〇〇一年に文部科学省が研究のための指針を策定し、現在は基礎研究に限って利用が認められている。しかし、実際に患者の治療に使うには、厚労省が臨床応用のための指針を策定する必要がある
 
 厚労省は、〇六年に策定された現行の「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」を改定して対応する方針だ。この指針は人体の骨髄などから採取される「体性幹細胞」に限って臨床応用を認め、厚労省の事前審査を受けることなどを義務付けている。この指針に万能細胞の規定を新設し、事前審査を条件に臨床応用を認める方向。

 ES細胞は移植後に患者の体内で腫瘍をつくる危険性も指摘され、体性幹細胞より厳重な安全性確認が求められる。受精卵を壊して作るという倫理的な課題があるため、移植を受ける患者や受精卵提供者へのインフォームドコンセントが必要だ。
 
 どんな病気の治療に使ってよいというわけにもいかない。別に有効な治療法がないなど、治療対象となる疾患も慎重に選定する必要がある。
 
 iPS細胞は通常だと作製時に特別な操作を加える必要があり、安全面ではES細胞よりも実用化までの課題が多い。指針の上でも厳密な取り扱いが必要になる見通しだ。ただ指針が厳しすぎれば日本の実用化研究が海外と比べて遅れてしまうことにもなりかねず、この点でも慎重な議論が求められることになる。

(2009/05/20 日本経済新聞)

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